肝胆膵内科
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主な対象疾患
肝臓、膵臓、胆道の主要疾患をご案内します。
良性疾患 | 肝疾患 | 急性肝炎/慢性肝炎(A型、B型、C型、アルコール性、薬剤性等) 劇症肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎(AIH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性脂肪肝炎(ASH)、肝嚢胞、肝膿瘍、肝血管腫 |
胆道疾患 | 急性胆嚢炎、急性化膿性胆管炎、胆嚢結石、総胆管結石、胆嚢ポリープ、慢性胆嚢炎、胆嚢腺筋腫症、原発性硬化性胆管炎、IgG関連胆管炎、膵胆管合流異常症 | |
膵疾患 | 急性膵炎、慢性膵炎、膵嚢胞、自己免疫性膵炎(AIP)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞性腫瘍(MCT) | |
悪性疾患 | 肝疾患 | 肝細胞癌、肝内胆管癌(胆管細胞癌)、転移性肝癌 |
胆道疾患 | 胆嚢癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌 | |
膵疾患 | 膵管癌、膵内分泌腫瘍、膵管内乳頭粘液性癌(IPMC) |
主要疾患の診療方針
肝臓、膵臓、胆道の主要疾患に対する診療方針をご案内します。
肝疾患
肝細胞癌
腹部エコー、CT、MRIなどの画像検査、αFP、PIVKAIIなどの腫瘍マーカーを組み合わせて診断を行います。
確定診断がつかない場合はエコーガイド下に生検を行います。診断がつけばラジオ波焼灼術※1(RFA)、肝動脈塞栓術※2(TACE)、化学療法、外科手術をガイドラインに沿って行いますが、それぞれの治療の特徴を活かし、一つの治療に固執せず、2つ以上の治療を組み合わせた集学的治療を実践しています。たとえば、TACEの効果が乏しい時はRFAを追加し、RFAの効果が不十分な時はTACEや肝切除、あるいは放射線照射を追加します。TACE無効例、肺転移、リンパ節転移など遠隔転移がある時は抗がん剤(ネクサバール)を使用します※3。
確定診断がつかない場合はエコーガイド下に生検を行います。診断がつけばラジオ波焼灼術※1(RFA)、肝動脈塞栓術※2(TACE)、化学療法、外科手術をガイドラインに沿って行いますが、それぞれの治療の特徴を活かし、一つの治療に固執せず、2つ以上の治療を組み合わせた集学的治療を実践しています。たとえば、TACEの効果が乏しい時はRFAを追加し、RFAの効果が不十分な時はTACEや肝切除、あるいは放射線照射を追加します。TACE無効例、肺転移、リンパ節転移など遠隔転移がある時は抗がん剤(ネクサバール)を使用します※3。
※1 ラジオ波焼灼術(RFA) RFAは肝細胞癌に対して80℃から90℃の熱焼灼を加えることで、癌細胞を凝固壊死させます。通常は3cm以内、3個以下の病変に対して治療を行いますが、患者さんの全身状態、肝機能を考慮して適応をきめています。焼灼時間は10分~15分程度で、静脈麻酔下に治療を行いますので、患者さんはほとんど苦痛を感じません。消化管に接している部位、通常のエコーでは描出しにくい部位の腫瘍は、腹腔内に生理食塩水を1~1.5リットル注入(人工腹水)して、安全に治療を行っています。消化管や横隔膜が焼ける心配がなくなります。 |
※2 超選択的肝動脈塞栓術 当院での血管造影検査は3Fr(フレンチ)サイズ(約2ミリ径)の細いカテーテルを用いて施行しているので、術後の止血、安静時間は1-2時間です。また、肝硬変を伴う患者さんが9割で、TACE後に肝予備能を低下させないため、治療は超選択的に行っています。また、TACEを繰り返すうちに肝動脈が閉塞し側副血行路が発達することがあります。その結果、下横隔動脈、内胸動脈、胃大網動脈が栄養血管になり、それらの血管を塞栓しなければTACEの効果が得られません。TACE無効例といわれる中には、栄養血管が同定できないケースも含まれています。当院の血管造影装置はCT機能を合わせ持ち、血管造影と同時にCT検査ができるため、栄養血管の同定、質的診断や治療効果判定に役立っています。 |
※3 集学的治療が有効であった症例 症例はS4、S8のHCCで腫瘍径7cm、胆嚢の近傍にあり、門脈、下大静脈に接している。TACEを行ったがリピオドールは十分集積せず、その後、RFAを2回行い約50%を焼灼でき、胆嚢近傍と深部に対してPEITを追加したが、急性胆嚢炎を併発し、胆嚢ドレナージ後に胆摘術を施行。深部で門脈やIVC近傍にPEITを行ったが効果なく、遺残病変にTACEを行い根治することができた。 |
肝内胆管癌
肝細胞癌、転移性肝癌との鑑別が重要で、必要に応じて生検で診断をつけます。切除できる症例は積極的に手術を行います。肝細胞癌よりリンパ節転移、胆管浸潤、血管浸潤をきたし易く、実際、切除できないケースが殆どです。切除不能症例に対して塩酸ゲムシタビン(GEM)とシスプラチンの併用療法、GEM単剤、TS-1単剤の化学療法を通院で行います。経過中に閉塞性黄疸が出現すれば、内視鏡的または経皮経肝的に胆管狭窄部にステントを留置します。
転移性肝癌
原発巣の治療と平行して、原発巣の治療に準じた化学療法を行います。大腸癌の肝転移は適応があれば肝切除術を行い、標準治療ができない場合はラジオ波焼灼術(RFA)を行うか、スフェレックス(DSM)という粒子の小さな塞栓物質を用いて肝動脈塞栓術を行うことがあります。
慢性肝炎
B型慢性肝炎に対しては年齢、HBe抗原の有無、肝障害の程度、肝硬変や肝細胞癌合併の有無により、インターフェロン、核酸アナログ製剤を使い分けています。C型慢性肝炎の治療は遺伝子型と血中ウイルス量により、インターフェロン単独治療、リバビリン併用インターフェロン治療、テラプレビル・リバビリン・インターフェロン3剤併用療法で完治を目指しています。最近はインターフェロンを使用せず、経口2剤で治療が可能になっており、今後も新たな薬剤が使えるようになってきます。
肝硬変に伴う難治性腹水、癌性腹膜炎による腹水
難治性の腹水に対して腹水再還流治療(CART)を行っています。膨満感が消失すると伴に、アルブミン、グロブリンなどの成分を体に戻すことができ、免疫機能の維持、全身状態の改善が期待できます。
鎖骨下静脈と腹腔内にシャントを作成して、腹水を汲み上げ、静脈に直接還流させる方法(デンバーシャント)もあります。感染、DICなどの血液凝固異常が併発することがあるため、慎重に適応を決めています。
鎖骨下静脈と腹腔内にシャントを作成して、腹水を汲み上げ、静脈に直接還流させる方法(デンバーシャント)もあります。感染、DICなどの血液凝固異常が併発することがあるため、慎重に適応を決めています。
劇症肝炎
劇症肝炎の診断基準を満たせば、FFPの輸血、血漿交換などの治療を行い、ICUで患者管理を行います。腎障害に対して血液透析も考慮します。肝移植の適応があってドナーがいる患者さんは、移植のできる施設に搬送します。
膵疾患
膵癌
一般的に早期発見が難しい疾患ですが、膵癌診療の経験を生かし、超音波、CT、MRIを駆使して早期診断、術前の評価を行っています。平成24年から地域の医療機関と協力して膵臓病早期発見パスを作成して、膵癌の早期発見に努めています。切除可能な症例は全体の2割程度で、手術不能例は化学療法を行います。化学療法は塩酸ゲムシタビン、TS-1、GEM+TS-1併用療法、最近、FORFILINOX、GEM+アブラキサンの併用療法が可能になりました。閉塞性黄疸、急性化膿性胆管炎に対してステントを用いて減黄術、減圧術を速やかに施行しています。緩和ケアは緩和ケアチームと協力して取り組んでいます。在宅緩和ケアは地域の先生と連携のもとで行っています。
急性膵炎
原因としてアルコールが大半を占めますが、総胆管結石、高脂血症による膵炎もみられます。多くは内科的治療で軽快しますが、重症例はICU管理、または、高次医療機関に搬送します。総胆管結石の嵌頓が原因であれば、可及的速やかに嵌頓結石の内視鏡的砕石術または胆道ドレナージにより減圧を行います。
慢性膵炎
アルコール性が大半で、保存的治療が主体となります。膵液ドレナージが不良な場合は膵管ステントを留置します。膵石による疼痛があれば、手術療法か内視鏡的治療の適応ですが、内視鏡的砕石術はしかるべき施設を紹介しています。消化吸収障害があれば内服治療を導入します。
胆道疾患
胆管癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭部癌
膵癌と同様に早期診断、進展度診断を行い、黄疸に対して胆管ステントによる内視鏡的減黄術を、切除可能症例は積極的に手術を行います。肝門部胆管癌などの難易度の高い手術も行っており、必要に応じて癌専門病院と連携しています。切除不能症例は塩酸ゲムシタビン(GEM)とシスプラチンの併用療法、高齢者、腎機能低下がある場合は、GEM単剤、TS-1単剤によるがん化学療法を行います。終末期治療は緩和ケアチームと協力し、在宅緩和医療も積極的に勧めています。
胆石症
胆嚢結石はガイドラインに沿って治療方針を決めています。結石による症状がある場合、症状がなくても胆嚢癌が否定できない時は胆摘術を行います。高度の癒着がない限りは腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。総胆管結石は症状がなくても内視鏡的砕石術を行い、胃切除後の症例はPTCDの瘻孔から砕石、採石を行います。過去3年間で総胆管結石の外科治療の症例は1例もありません。胆石に伴う急性胆嚢炎や急性化膿性胆管炎、急性膵炎は迅速に治療を行う必要があるため、いつでも患者さんを受け入れています。
急性胆嚢炎・急性化膿性胆管炎
原因として胆嚢結石、総胆管結石が多いのですが、胆嚢癌、胆管癌、膵癌、十二指腸乳頭部癌などの悪性腫瘍でも発症します。迅速な診断と治療が必要で、当院では経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)、内視鏡的胆管ドレナージ(ENBD、ERBD)、経皮経肝胆管ドレナージを病態に応じて行っています。治療前に敗血症、DICなどを発症していることがあり、高齢者では致命的になることがあります。
担当医からのメッセージ
- 肝癌、膵癌、胆嚢癌、胆管癌などの難治がんの医療に取り組み、早期診断から高度な治療まで行っています。特に膵、胆道の検査や治療は難易度が高く経験と熟練を要するため、経験豊富な医師が責任をもって施行します
- 急性胆嚢炎、急性化膿性胆管炎、急性膵炎、肝膿瘍などの重症感染症、胆石発作、閉塞性黄疸、急性腹症はいつでも受け入れ、決してお断りしません。腹痛、発熱、黄疸などの症状があれば我慢せず、かかりつけ医、または、当院救急外来を受診して下さい
- 高齢者医療、終末期医療の重要性を受け止め、地域との医療連携を強化し、安心して医療を受けて頂けるよう努めます。認知症や精神疾患を抱えた患者さんでも、症状が安定していればいつでも受け入れます
- 初診時に血液・尿検査、腹部エコー、CTなどの画像検査を行い、治療方針を決めることも可能です。午前中の診察予約であれば朝食抜きで、午後の予約の場合は昼食抜きで来院して下さい
- 患者さんや家族の方々と向き合い信頼関係を構築することを心がけています。十分な説明と同意のもとに医療を行いますが、不明な点はお尋ね下さい